私の大阪での生活も2年目を迎え、高校2年生の春を迎えた。
右も左も分からなかった去年からすれば大分慣れただろう。
言葉だけはまだ東京の頃のものが抜けないのだけれど。


こちらに来て初めて出来た友達、白石蔵ノ介とは幸運にも今年も同じクラスになった。


高校から来たから別に転校生という訳ではないけれども、
関東の言葉で話したからだろう、入学当初は周りからは少し話しかけにくいようだった。
そんなのも関係なしに話しかけてくれたのが白石蔵ノ介だったんだ。


「名前なんて言うん?どっから来たん?俺白石蔵ノ介って言うねん。」


初めて話した4月の風が心地よい日の事は今でも覚えている。
どこか異邦人を見るような目で見られていた私に笑顔で話しかけたてくれたんだ。
色素の薄い髪の毛と整った顔立ちに初めは少しドキドキしてしまったが、あっという間に打ち解けてしまった。
そのお陰かクラスメイト達とも話せるようになって来て、大阪に来て良かったと心から思えるようになった。



今ではお互いに「蔵」、「」と呼ぶ仲になり、気がつけばいつも行動を共にしていた。
休みの日もお互いに予定がないと分かれば待ち合わせだけを適当に決めてぶらぶらする。
話していればそれで一日経ってしまう、そんな感じだった。
お互いにあまり口には出さないけれど、すごくすごく大切な友達だってことは心の中で思っている。









「なんやお前ら今年もまた同じクラスかい。腐れ縁やなぁ。」


新しい2-3の教室の窓側の席でで談笑していた私と蔵のところに現われたのは謙也だ。
謙也とは蔵の部活繋がりでたまに話す関係だった。
なぜここにいるのかと思うと謙也の手には今月の部活の予定表。
部長に頼まれて持って来てくれたらしい。

強豪四天宝寺高校のテニス部ではあるが、予定にはきちんと休みも組み込まれている。
休む時には休む、というのも強さの秘密なのかも知れない。



「そうだ蔵、今度の休み梅田行かない?お母さんのの誕生日プレゼント買いたいんだ。」

「おお梅田か、ええなぁ。最近行ってへんかったしな。」




予定表によると次の休みは今週の日曜日。梅田と言えば東京で言えば渋谷にあたる…のだろうか。
大阪では割と好きな街だった。
人は多くてごちゃごちゃしているかも知れないけれど、可愛いお店がいっぱいあるから。

携帯で日曜日の天気を確認すると、快晴になるらしい。
お気に入りの春もののスカートを履いていこうかな…なんてぼんやりと考えた。





「そんじゃ俺教室戻るわ。」


そうこうしていると昼休みがいつの間にか終わりに近くなっていて。
違うクラスに戻る謙也に「ばいばーい」と手を振り、午後の授業の準備をするために席を立った。





 
2011.6.4