「じゃあ、明日の1時に……『秘密基地の前でね』」

一瞬、俺は何のことだか分からなかった。
中学の時のある事をきっかけに話さなくなり、久しぶりに会った幼馴染から出た言葉がそれだった。
なぜか聞いたことのある言葉。何かが引っかかっている。 



俺は家に帰り、適当に鞄を放ると机の中を探した。
そうすれば見つかるような気がしたからだ。


あまり整理整頓が得意でない俺の机の中はぐちゃぐちゃだったが、見つけることが出来た。
引き出しに仕舞ってある、小さく折りたたんだ紙を。 
そこには幼い日の俺の字でこう書かれていた。


 
あいことばは「ひみつきちでね」だからな
10ねんごにぜったいいっしょにたいむかぷせるをあけるんだ!
わすれたらゆるさないぞ!
5がつ1にち
いずみこうすけ 


 
書いてあるのはたったそれだけだったのに、思い出した。何もかも、すべて。

小さかった頃、と過ごした日々。
俺たち、やっぱり幼なじみなんだな。


ふと、記憶は中学時代へ飛んだ。
中学に入って俺たちは一緒に学校に通っていた。
それが俺たちの普通だった。
周りから冷やかされることもあったが、俺は気にしなかった。
俺にとっては家族同然の存在だったし、一緒に帰ることだって何もおかしい事ではない。
も気にしてないだろうと思っていた。
あの日までは。  


「孝介。」
「おう、!今日も部活終わったらいつものとこな。」
「……私、今日から一人で帰る。」
「……え?」
「朝も一人で行くから。」
「は?ちょっと待…」
「バイバイ、孝介」  

そう言って歩きだす姿を俺はただ見つめることしか出来ず、追いかけることすらできなかった。
なんか怒らせるようなことしたか? 
そう考えたけれども思い当たる節は一向に見当たらない。
ただの悪戯だと思った。
明日になったらまたいつもみたいになってんだろ、と楽観的に考えていた。 

だが、そうじゃなかった。

は本気だったんだ。
廊下ですれ違っても何も言わず無言で下を向きながら避けられる始末。
一体どうしたって言うんだ…?

  
「なぁ、お前最近さんと帰ってねぇの?」 
と帰らなくなって数日経った頃、野球部の奴が聞いてきた。

「あぁ。」
「ケンカでもしたか?」
「いや、俺もよくわかんねぇ」
俺がそう言うと、そいつは少し考えてから言った。
「もしかして……あれ、お前知らねぇの?」
「何を?」
「何って……」 
「話せよ!」

気付くと俺は、そいつの肩に掴みかかっていた。
落ち着けと言われたが、そんなことできるわけがない。

「…さんさぁ、女子からちょっとにらまれてんだよ。…お前と仲良いから。」
「…は?」

信じられなかった。俺のせいで、が…?

そういう話に疎い俺も悪いと思った。
でも、なんでなにも言ってくれねぇんだ、。 
それから、とは話さなくなった。
女子からにらまれているというもあっただろうが、あいつが俺の傍にいたくないと思ったのは事実だろう。  
このまま高校も別れて話せないまま終わるのか、と思っていた。
でも、幸運にも同じ高校になった。
クラスは違えど、また話す機会がないかと考えていた。


そんな時に出てきたタイムカプセルの話。
なぁ、。俺、ずっと聞きたかったんだ。
お前は俺が本当に嫌いになったのか?
話していない間に彼氏でも出来たか? 
教えてくれ、……

俺は、お前が―――  


(答えは明日、出る)











あとがき
さあついに次で終わりですよ!
中学時代のもやもやは晴れるのかな?
2008.8.4

2011.5.9 加筆修正