「あ」
「―――っ!!いっっったあ!?」
マヌケな声が聞こえたかと思った次の瞬間・・・
ガコンと物凄い音がして頭上から何かが降ってきた
あまりの痛さに頭を抱えてしゃがめば、見えたのは筆箱
ああ、この筆箱には見覚えがある。ものすごくあるぞ
あたしはさっきまで隣を歩いていた無駄に背の高い人間を鋭く睨むと大声をあげる
「コッラァ利央!!何してくれんのさ!」
「ごめ!筆箱落ちた!!」
「もぉ!しっかり持っててよね!!だいぶ痛い・・・」
大袈裟かと思うかもしれないが、これが相当痛い
普通の筆箱ならまだしも、コイツが持っていたのは缶なので強度は図り知れない・・・
落下物としては結構危険なレベルだろう
申し訳なさそうにこっちの様子を伺う利央を見ながら、廊下に落ちた筆箱をみる
え、ちょっと・・・角が凹んでるんですけど、これは地面に落ちたからだよね?
あたしの頭に当たったからじゃないよね?
だとしたら石頭すぎるだろうに、あたし
「ううぅ、恨んでやる・・・たんこぶできたら恨んでやる」
「えぇ!?そんな痛かった!?」
「あはははは、それ聞く?ねぇ、今この状況でそれ聞いちゃうのか君は」
一度こいつを同じ目に合わせてやりたい
その機会があればあたしは、一つといわず二つも三つもたんこぶを作ってやるのに
と、いうか、どうしよう
本当に地味に痛いんですけど・・・
あたしが頭を抑えて座ったままでいるのを見て、さすがに心配になったのか
利央が声をかけてくるけど、大丈夫だといっておいた
許してやろう、こいつに悪気はないんだから
などと上から目線で考えているとき、向こうのほうから利央を呼ぶ声が聞こえた
「準さん!!」
誰だそれは
「なーにしてんだ、バカ利央、女子泣かしてんじゃねーよ」
「な!?違っ!まだ泣いてないし!」
「(これから泣く予定もないっつの)」
そう思いながらやっと顔を上げて・・・思わず固まってしまう
目の前にいる“準さん”と呼ばれた人物が、かっこよかったからだ
えぇ?誰ですかこれ誰ですかこれ誰ですかこれ!!!
ものすごく好みだ
これが噂に聞く、ひ、一目惚れってヤツなんだろうか?
とにかく、あたしは動くことができず、失礼ながら“準さん”を
凝視するという痛い子になってしまったわけだがそれを気づく余裕もない
「何されたよ?えーっと・・・」
「あ、です、―――
えっとペンケース頭上に落とされちゃって、地味に痛くてですね・・・」
「うっわ、利央おまえ最低」
「わ、悪気はないんすよ!」
「利央サイテー」
「う、ぐっ・・・」
あたしにも最低といわれるとさすがに返す言葉もないのか
利央は言葉を詰まらせて黙ってしまう
少し笑ってから「嘘だよ、大丈夫」というと、利央も笑顔になった
・・・・・・・犬だ
「ところでさん大丈夫?保健室行く?」
「あ、大丈夫です、えっと、失礼ですけどお名前・・・」
「あぁ、高瀬準太。このバカの先輩で一つ上」
なるほど、ということは野球部の先輩だろう
どこのポジションなんですか?とは、勇気がなくて聞けなかった
意外とチキンな自分にビックリだ
ああ、でも本当にかっこいいよ高瀬先輩
笑顔なんかすごい柔らかいし・・・あたし、笑顔柔らかい人に弱いんだよね
そう思っていると、さっきまで自分が押さえていた場所に何かが当たる
一瞬ズキンと小さな痛みが走って一瞬、思わず顔をしかめてしまった
あたしのその顔を見たのか、高瀬先輩が慌てて手を離す
ん?・・・手を、離、す?
「っと、わりぃ、痛かったか」
「い・・・いえいえいえいえ!!!ぜ、全然大丈夫です!」
大丈夫じゃないけどね!!!いろんな意味で!!!!
さっき高瀬先輩に触られていたところが急に熱を持った気がして
嫌でも意識が向いてしまう。恥ずかしい・・・
「あー、コブになるんじゃないのか、それ
多分だけど・・・」
「げ!?本当ですか」
「多分、な。何か冷やしたほうがいいんだろうけどなぁ・・・
お、そうだ、これやるよ」
手渡されたのは高瀬先輩が持っていたペットボトルの水
ついさっき買ったんだろう、よく冷えていて気持ちが良かった
・・・って、そうじゃないだろう、あたし!!
これはさすがに悪い、嬉しいけど悪い
ペットボトルはまだ未開封だ
きっと飲もうとして買ってきたものを受け取ってしまっていい訳がない
しかも知り合いならまだしも、今会ったばかりのあたしに、だ
「もらえませんよ!だってこれ高瀬先輩の飲むやつでしょう!?
お金もったいないですよ!!!」
「いいの、それ、このバカ後輩が迷惑かけたお詫びみたいなもん
黙ってもらっとけー。こぶできたら後から大変だぞ」
「・・・・・・は、はい」
あまり断るのも失礼だと思ったので、素直に受け取っておく
ああ、冷たい
「んじゃぁオレ行くわ
利央、もうバカすんなよー」
「あー!!またバカってゆったー!?ヒデェよ準さん!!」
「あ、ありがとうございました!!!」
「おう、またな」
またな・・・か
去っていく先輩の背中を見て息を吐き出す
あ、なんか今初めて息をしたって感じがした
それほどまでに、無意識に緊張していたということなんだろうか
(まいったな・・・好きになっちゃったよ)
もらったペットボトルを頭にあてた
ああ、冷たい
本日、頭上注意
(利央、あたし先輩のこと好きかも)(うへー、やっぱり・・・!)
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相互記念として莉玖さんに捧ぐ
遅くなってすみませんでした!!
リクは後輩か同級生ということだったんで好きに書かせてもらいました
利央ですぎって話ですよね!!わはははは!すみません!!
こんな駄文でよろしければ、どうぞ!
それでは、これからもよろしくお願いします!
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