俺にはっていう幼なじみがいる。

高校は違うものの、小さい頃からの腐れ縁で良くお互いの家を行き来している。
お互いの両親も慣れたもので、お互いがいない時に行っても気軽に迎えてくれるのだ。
そこまでいけばもう家族も同然の関係なんだが、俺はそれ以上の感情を抱いていた。



「おい、今日もお前ん家行かせろ。」
「嫌、って言ってもどうせ来るんでしょ?」
「まあな」 
「元希も毎日毎日よく来るよね。ま、いいけど。」


この鈍感野郎。
俺が何で毎日お前ん家に行くか、よく考えてみろよな。
練習で疲れ切った体を引きずってまでも、ほぼ毎日のように通っているのだ。
それは出来るだけ多くの時間を共に過ごしたいから、つまり…
それ以上は言いたくはないけどな。





いつも通り俺は雑誌を読む。は勉強しいてる。
俺の雑誌をめくる音とシャーペンのカリカリという音だけが響いていた。
それでも決して居心地が悪くないというのはお互いの関係を表しているだろう。
この沈黙ですらも居心地が良い。


いつも通り静かだなと思ったら、いきなりが聞いてきた。



「元希って好きな人いないの?」

なんだよ、唐突に。 
それは俺が聞きたいくらいだったのに。
俺が聞きたくても聞けない質問をそう簡単に言いやがって。


「結構モテてるんでしょ?武蔵野第一にいる友達が言ってたよ。」

…人の気も知らずに続ける。
なんだか少し腹が立って来たような気がしてきた。
そこでふと悪戯をしてやろうと思いつく。


「そんなに教えて欲しいのか?」
「うん!」
「ちょっとこっち来い。」 



俺はを手招きする。
そして、の手をぐい、と引っ張り、俺の唇との唇を重ねてやった。 

 「ん……っ…」

の甘い声が漏れる。
おいおい……ますます好きになっちまうじゃねぇか。
俺は唇を離しての顔を見る。


頬は真っ赤で、瞳が少し潤んでいる。

「元希の…ばかぁ…っ」 
あいつは怒ってるつもりらしいけど、声に全然怒気がない。
むしろその表情が俺をますます好きにさせるようなものだ。

「わかったか?俺の好きな奴。」
こくん、とは頷く。 



「俺の好きな奴は目の前にいるんだよ!」  
言った。言ってやった。
ずっと温めていた気持ちをついに言葉に出して、俺は顔に熱が集まるのを感じた。

そしたらは急に泣き出した。 
やべえ、俺なんかまずい事言ったか?
少し戸惑い出しだ俺を前には口を開いた。


「あたしの…好きな人も…目の前にいるの…。
  今まで…望みがないって思いながら…一緒にいるの…ちょっと辛かった……」

――……そうだったのか。
 
「わりぃな。辛い思いさしちまって。」
 
ううん、とは首を振る。

ちょっとハズいけど、俺はもっかい言う。
ここでもっかい言わないと駄目な気がしたから。

「、好きだ。」
「…あたしも元希が好き。」

2人共なんだか恥ずかしい気持ちになってしまったがお互い幸せを感じているのは確かだろう。

この照れくさい沈黙を破るために俺は言った。

「よし、じゃあ今からお前は俺のモンな!」
「ええ!?」 
当たり前だ。誰にも渡しやしねぇ。
俺のなんだから。









おまけ 
「ファーストキスだったんだけどな……」
「あ、マジで?じゃあセカンドキスも頂き。」
「ちょ!……ん…っ」

お前の唇頂いていいのは
俺だけだ!






あとがき
榛名は独占欲強そうですよね
何様オレ様榛名様!って感じ!笑
2008.2.2

2011.5.1 加筆修正